「夜桜を見にいこうよ。夜の桜ってスッゴイ怖いよ。人には怖いものなんて沢山ある」
そんなことを言って、その夜、桜を見につれてってくれた。
怖いものなんて沢山ある。知っているけど。
誰もいない、暗い道の先の公園。
大きく広がった桜の枝の間に街灯があって。
桜が光ってるように見えて。
怖かった。
彼は笑顔でこっちを向いて
「綺麗だから怖いんだ」
って言った。
「桜は損をしてる」
と言った。
「綺麗って知っているなら
いいんじゃないの」
私はそう言った。
「どうだろうね」
彼は桜が好きなのだな、と思った。
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