彼はたまにいなくなった。
いつもの部屋で待たせてもらう。いつまでも帰ってこない。
荷物はあるんだけど。と彼の友達はコーヒーを入れてくれた。
コーヒーが飲みおわっても、彼は帰って来なかった。
私は彼を探しにいった。
彼は中庭の木の下にいた。もう日は沈んでいて、寒かった。
彼は見つかっちゃったと笑った。
煙草を吸っていた。
「世界はなんて寂しいんだろう」
彼は言った。
空には星が出てきて、澄んだ空気が冷たくて。
肌寒くて。
彼の煙草の火がちらちら見える。
互いにもう何もしゃべらなかった。
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