そいつは俺が今までに会った人間の中でずば抜けて一番凄い奴だった。
あんまりマジメな奴じゃなくて、授業はよくサボっていた。
っつーか、週に三日は朝からバイト入れてんだ。
なるべく週に二時間やる授業の片方狙ってるみたいだったけど、全然無理だろ。
まだ週休二日じゃなかったけどさ。
ぜんぜんむりに決まってんじゃん。
高校生だぜ?
でも凄い奴だ。
もしかしたら誰よりもマジメな奴だったんじゃないかって思うときもある。
昔はたまにだったけど、今は結構。思うかもしれない。
まぁとにかく凄い奴でさ。
俺はそいつと友達だったんだ。
そいつはそう思わないかもしれないな。
思ってないかもしれないな。
でも俺は友達のつもりで。
俺は凄い友人を持ってたんだ。
今日、そいつは学校に来ていた。
午前の授業が終わって、皆、机を寄せたりしてグループで飯を食ってる。
そいつは弁当を持つとふらりと消えたんだ。
俺はそのとき「普通」だった。
友人が寄ってきて、弁当とか購買のパンとか70円のココアとか並べて。
カップ麺の匂いとか漂わせて。
そのとき俺は非常に気分が悪かった。
まわりが騒々しくて煩いと感じていたんだ。
一人で逃げていったそいつを見て羨ましいと思った。
俺は黙々と飯を詰め込んで、教室を出た。
屋上への階段を上る。
そのとき、屋上にそいつがいる気がしてたんだ。
ムカついていた。扉を勢いよく引いた。
強い日差しが一瞬キツくて。
軽く瞬きしてそいつを見つけた。
(続く)
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