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ついった
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蜂蜜色の髪に黄色い花冠。顔にはペイント。
祭り衣装から出た腕や足にもペイントがある。
服にも青や赤で模様が描かれ鮮やかだ。
皮のサンダルを履き、通りを歩く。
彼女は笑顔だ。
私は身長もあり目立つ姿を、模様のある大きな布を頭からかぶり隠していた。
私の姿は伝承で伝えられている。
その伝承の姿そのままで歩くのは、若干の抵抗を感じたのだ。
彼女は「気にすることはないのに」と笑ったが。
男は腰から幅のある布を巻き、上半身は裸だ。
そこに黄色い塗料でまず色が塗られる。
そして上から女の姿と同様にペイントを施すのだ。
頭や首に布を巻いたり大きな飾りをつけたり、男も派手な格好をする。
黄色い花輪を首から下げる。
街中がそんな姿の人々でいっぱいなのだ。
老若男女。すべてが彩りに包まれる。
私と彼女は道を歩き、露店を回った。
食べ物を出す店、出し物をする店、様々だ。
昼過ぎに一度、大通りを山車が通った。
風になびく旗に囲まれた山車の上には野菜や麦が山のように積まれている。
それは大通りを真っ直ぐ進み、神殿へ行くという。
「今年の初めの収穫がすべて、あの神殿へ上っていくの」
彼女の言葉に私は言った。
「神への供物か?そんなことしても、私は少しもそれを受け取っていない」
彼女は山車に向かって黄色い花を投げた。
人々は皆、そうやって山車を送る。
「あれは教会に屋根を求めて訪ねたものにふるまわれたり、
 災害で家を失ったものや冷害で収入がなかったもの、
 とにかく食うに困った人々に与えられるの。
 街の役にはたてられているわ」
彼女から花を受け取り私も山車へ投げた。
「よく考えられているのだな…」
彼女は言う。
「大きな古い街よ。もう人の力だけで、街が動くわ。
 でもまだ神を祭るのは何故だと思う?」
「わからない……」
私は山車を見つめながら答えた。
もう最後尾が随分と前へ行ってしまっていた。子供が後を追っかけていった。
「何事にも始まりがあったからだわ。
 始まりは、きっと貴方の力が必要だった。
 実際貴方が力を貸したことがあったのではないの?」
私は彼女を見た。祭りの空気に少し頬が赤かった。
「そうだったかもな」
私はそれだけ答えた。
彼女は歩き出す。
私の手を引いて。
神殿前の広場に市が開いているという。
遠く離れた山車の通った道を、
私たちはゆっくり歩いていった。

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