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ついった
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私が父と旅をしていた頃。
あるとき私達は飢えに襲われた。
ヒドク熱い岩の多い砂漠だった。
食料が尽きて、父は連れている羊を殺しだす。
売る為に、食らう為に、こういうときの為に連れている羊たち。
草の少ない砂漠で、やせ細っていく羊たちを少しずつ殺し、血と肉を食らう。
昼と真逆の夜の寒さをその皮と毛でしのいだ。
そのとき、私も自分で世話をしていた羊を一匹連れていた。
父はその私の羊を殺さなかった。
少し幼かったが、私が丹念に世話をした羊だった。
私は父に、他の羊と同じように、私の羊を扱って欲しかった。
でも、父が連れていた最後の羊を殺しても、そしてその先も、私の羊が殺されることは無かった。
私の羊は痩せ細っていって、やがて死んだ。
父は丹念にその羊から毛を刈ってカラッポになった食料袋に詰めた。
そして二つの角を熱い日の下で黙々と小さなノコギリで斬って、私に渡した。
その日の夕方、私達は街に着いた。

2日経っても父はまだベッドで眠っている。
私は何事も無かったかのように快復した。
私だけが鬼だった。
父はやはり人であって、私の様にはいかない。
私は父が眠っている間、私の羊のことを思った。
あと一歩のところで死んでしまった羊。
殺されないことを不満に思っていたのに、何故か私には悲しかった。
私は戦にも出たことの在る戦士で、その羊は私の家畜で。
父は私を一人前に扱わなかったのだけれど、きっとそれだけではなかったから。
私は私の羊が悲しかった。

 
「泣いてるの?お嬢さん」
真っ白な太陽の光を背に背負っても、なお白い。
悪魔。
私は彼が悪魔だとわかった。
「あの子を連れに来たの?」
私が聞くのに、彼は首を傾げる。
「あの子?」
「私の羊」
「ううん、君の羊は知らない」
彼は言った。
「君は鬼の子?綺麗だね。」
私は彼の角を見ながら、あの子の角をいつか飾り付けて、祭の衣装をつくろうと。金箔を貼って、石を沢山磨いてぶらさげて、
「そこの人、よくして上げようか」
きっと綺麗だ。
「貴方の名前は?」
私は悪魔に聞く。
「・・・だよ」
彼は答えた。

 
 
********************

ヒナの話。
ちと最後が詰め込みすぎた。

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