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ついった
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でも連絡は出来る。
平日の昼にいるだろうか。
ひとまずかけてみよう。
床に置きっぱなしの電話、
隣に座って壁にもたれた。
番号を押す。
俺は何がしたいんだ。思う。わからなくて。
コール音。
ブツ。
「はい。」
違う声だった。少し高い男の声だ。
「あ、えと、全也さん、いますか?」
俺は少し動揺していた。
多分、バンドのメンバーとやらなのだろう。そいつは、
「何、勧誘?雑誌とかの人?何、誰よアンタ。」
無礼な物言いだ。
「全也さんの昔の友人です。えと、高校の頃の」
俺はマジメに答えた。
「え、何、マジ?あいつ高校行ってたの?」
アホな会話だった。
その時、離れた所から声がした。
「誰だ。」
「あ、全ちゃん。」
電話の向こうの声は続く。
「お前のダチだって。」
「名前は?」
アイツじゃないほうの声が繰り返した。
「北・・・」
受話器から離れて声。
「北だって。」
「貸せ。」
コードが揺れて少し雑音が入った。
・・・・・・
沈黙。
受話器の向こうの遠くではさっきの声が騒いでいたが。
奴はしゃべらない。
「もしもし・・・」
こっちから、言ってみた。
「元気か」
ひさしぶりの、前と変わらない声が、相変わらずの調子で聞こえた。
「お前は?」
「元気だ。」
「何してる?」
「掃除をしていた。」
「そうじゃなくて。」
「わかってる。」
「なら言うな。」
「・・・バンドをやってる。」
「知ってる」
「なら言うな。」
笑う。
向こうから「げ。全也が笑ってる。」とか「ウア。」とかさっきの声ともう一つ。高めの声が言う。
そう、俺は奴と笑えるんだ。
「俺、会社作ったよ。」
「知ってる。たまに見る。」
俺は今地域情報誌を作っている。それを読んだのだろうか。
照れくさかった。
「お前凄いよ。やっぱり。お前本当に派手にやってるし。」
「お前もな。」
「うん。
 でもさ。俺、お前に素直なままでいろとか、言われたのにさ。
 だから好き勝手できるかなって思って、会社作ったけどさ。
 結局、笑ったり、頭下げたりしてて、結局、結構、ダメだったよ。」
少し泣けた。悟られないように頑張った。
「お前、元気か」
突然言われた。
「元気だけど」
「悪かった。」
「は?」
よくわからない。
(続く)

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