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ついった
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-ガーランディア、
-あぁ黄金の小麦の体
-我らが祈りは汝に届き
-我らが幸はここにあり

「ストロベリー」
歌う声をさえぎり名を呼んだ。
呼ぶ先には蜂蜜色の髪をした女。少女と呼ぶには大人だが、大人の女性というにはまだ若すぎる。
首には色の濃いマフラーを巻いて、しかし袖の無い短いズボンと上着が繋がった服を着ていた。
彼女は裸足で、川で釣りをしている。
今、私のところからは彼女の後姿しか見えないが、彼女の瞳は綺麗な青色をしている。
「ストロベリー、何故その歌を歌う」
もう一度声をかける。
彼女はこちらを振り向かずに答える。
「あら、あなたの歌だからよ、ガーランディア。
 もう少しで年に一度の収穫祭よ、風も歌っているわ」
彼女は歌うように答えた。
私は自分の体を見る。
黄味を帯びた象牙色の肌。右胸の上に刺青のような模様がある。
長い髪は獣のようにバサバサで黄金色だ。
顔には赤と青でペイントがある。実際は描いたものではない。
この姿になるとき、どうしても浮かび上がってしまうものだ。
私は彼女の答えに多分、渋い声で返した。
「私は豊穣の神などではない。ガーランディアなど、人間のつけた名だ。
 私にとって意味が無い」
「カーラ」
彼女はさえぎるように言った。
「私が行きたいと言っているの」
彼女は釣竿の針を川に投げた。
「偶像だろうと貴方は貴方だわ。
 それにお祭りなんて楽しそうじゃない?」
「私は行きたくない」
私は憮然として言った。
「ふふ、お祭りに行ったら私が巫女の服を着て踊ってあげるわよ。それとも」
川に浮かぶ浮きが沈んだ。
「見たくなーい?」
彼女はこちらを見て微笑んだ。
「いや……」
あげられた竿の先の魚が私の頭の上で跳ねた。
私はもう昔から、
彼女には勝てないことになっているようだ。
彼女の笑顔は魅力的だった。
彼女との出会いにはまったく、彼女の笑顔は無かったのだが、
こうやって共に旅をするようになり彼女を知って。
私は彼女に、どこまでも惹かれていくのだった。
「行きましょう、カーラ」
カーラとは彼女のつけた名だ。
今私にとって、きっと一番価値のある持ち物だろう。

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