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ついった
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ふと木々の間の闇が揺らいだ。
「お祭りに行くのかい?」
闇から人の形が生まれ出る。
短い髪が薄い紫から水色に光る。
瞳は赤。しかし片方。もう片方の瞳は閉じられ、細い矢印のような模様が閉じられた瞼を縦に横切っていた。
細身の体で左腕は肩は肌を出しているが、先への途中で服へと変わり、袖から手のひらが覗く。
そのように体を作る方が楽なのだ。
私と同じく神だった。
闇の一族。その王子。
闇の眷属は精霊と呼ばれるものも悪魔と呼ばれるものも一つの国に属する。
その王国の王子。
身分は高いが身は軽い。
よく人の国へ行っては人間の女をたぶらかすらしい。
私はかなり……古くからの知り合いであった。
友人では、ない。
「フレッグ、あなたも行く?」
彼女の言葉に、彼は大げさに肩をすくめた。
「カーラのお祭りだろ?僕はゴメンだなぁ。僕のお祭りだったらいいんだけどね」
私は彼を睨んだ。
「フレグランス。お前にその名を呼ばれる筋合いは無い」
「僕のことはフレッグって呼んでくれよ、ガーランディア。
 君は相変わらずお堅いね。こんなヤツといると肩がこらないかい、ストロベリー?」
彼は飄々とストロベリーに歩み寄る。
「お荷物を持ってくれるから肩はこらないわよ。あんまりからかわないでやってね。
 拗ねるから」
彼女は笑顔で応じている。
私は拗ねたりはしない。
不機嫌になるだけだ。
「あれ。釣りなんかしてるの?そんなもんはさぁ…」
フレグランスはひょいと川べりに腰を落とすと、川の水に手を触れる。

-ビッ!

川の中の小石の影が上へ細く伸び、数匹の魚を弾き上げる。
「ほーら、簡単」
フレグランスはニッコリと手を広げた。
草の上に落ちた魚がビチビチと跳ねた。
「ふふふ。簡単だけど情緒がないわ。
 結構釣りも面白いのよ?あなたもやってみるといいわ」
彼女は笑って釣竿をしまった。
「じゃあお昼にしましょうか。フレッグも食べていくでしょう?」
「あぁ。喜んで」
ちゃっかり腰を下ろす奴だ。
火の準備は私の仕事だろう。
まぁかまわない。薪はもう準備してある。
いつもの昼の風景だ。
奴が彼女の近くに座ること以外は、なにも気にすることは無い。

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